四季の移ろいを愛おしむ

季節の変化にふと気づいて心動かされる瞬間、ありますよね? ふだん見逃してしまいそうな季節の移ろいを目で見て、肌に触れて、においを嗅いで、舌で味わって、耳で聞いて、そわそわしたりウキウキしたり。
日本では、古来より節分や冬至など、四季ごとの楽しみや年中行事が根付いています。四季の移ろいを愛おしみ、よろこびを分かち合う。その心はのれんにも息づいています。

のれんの衣替え

「のれん」の衣替えをするようになったのは大正期以降といわれています。
もともと、夏暑く冬寒い京都などでは、部屋のしつらえを季節で変えたりする習慣があり、それと同じように旅館や料理屋、寿司屋などでもこの習慣を取り入れ「衣替え」をするようになったと思われます。

夏は白地に黒文字、冬は紺地で白抜きとほとんど決まっており、素材は、夏は見た目にも涼しい麻、寒い冬は木綿が使われていました。
また、交換の時期は、制服などと同じ6月と10月となっていました。

今ではのれんの衣替えをするお店は少なくなってきましたが、のれんで季節を感じさせてくれるお店には、細やかなおもてなしの心を感じずにはいられません。

季節を感じる色やモチーフ

ひと目見て季節が分かる、そんな色やモチーフがあります。お店にそんなあしらいを添えることで季節感を演出することができます。

明るめのピンクや黄緑色の生地で、暖かさや明るいイメージに。清涼感あふれる色が好まれます。白や青、水色の生地が涼しげです。紅葉のイメージから、こっくりした橙色や赤系色を多分に含んだ茶系の生地で。素朴な色合いのグレーや薄紫など、あるいは鈍い色に少し赤みを含ませた温かみのある色で。
梅、うぐいす、雛人形、桜、菜の花、つくし、藤あじさい、蛍、金魚、朝顔、夏野菜、入道雲、ひまわり月、すすき、桔梗、もみじ、コスモス、ぶどう、栗、柿椿、ひいらぎ、雪うさぎ、雪、柚、ナンテン、みかん、餅

春夏はしゃりっと軽やかな麻、秋冬はやさしくしっかりした綿素材が好まれてきましたが、そこまで生地にこだわらなくても、色やデザインでじゅうぶんに季節感を出すことができます。もっと手軽に、自由に季節のれんを楽しんでみましょう。

季節をのれんに添えるおもてなし

季節を五感で感じる。忙しい現代人にとって、それはとっても贅沢なことかもしれません。
だからこそ、お店にお迎えするお客様に、季節の移ろいに気づく素敵な瞬間をプレゼントする。そんな気持ちでのれんを掛けかえてみませんか?